人事担当者向けオススメ本

第61回  あの子が欲しい


あの子が欲しい 朝比奈 あすか

採用担当者の視点で就職活動をリアルに描いた新しい就活小説。ネットを駆使した採用活動の虚々実々の駆け引きを見事に描いています。

アラフォーの女性主人公・川俣志帆子の勤務先は、新興IT企業クレイズ・ドットコム。学生からネットに“ブラック企業”と書き込まれ悪評が広まっている中、新卒採用のプロジェクトリーダーに任命されたのが主人公の志帆子。志帆子はこのような逆境の中でも、優秀な学生を集めるために次々と有効な手を打っていきます。

凡人であれば心が折れそうなネットの書き込みを見ても、「こちらも学生を平気で駒扱いしている」「組織対個人である以上、組織側が優位に立っているのだから、何を書かれても鷹揚に構えていなければ」と考える冷静さと冷徹さを兼ね備え、淡々と業務を遂行していきます。

今まで就職活動をテーマに書かれた小説は何冊か読みましたが、採用担当者側の視点で書かれた本は初めてで新鮮でした。ネットでスグに悪評が広まる近年の採用活動の難しさ、採用担当者の苦悩がリアルに描かれ、その中でどうネットや悪評と向き合い優秀な学生を確保するかが細かく描かれ、とても参考になる一冊でした。

採用活動に携わっている方なら、感情移入しながら楽しく読めると思います。休日の息抜きに、今後の採用活動のヒントにぜひ。

このページのトップへ

第62回  15秒で口説くエレベーターピッチの達人

欲しい人材を口説くときの参考書としてご紹介します。(これももちろん口説く人が魅力的であることが前提です)エレベーターピッチとは、忙しい社長などにエレベーターに乗っている15〜30秒の間にプレゼンし、相手の興味を惹くためのスキル。たった30秒で人材を口説くことはないと思いますが、学べるノウハウはたくさんあります。

この本で書かれているテクニックを採用現場に置き換えてみます。まず口説く前に、自分が叶えたい目標(入社してもらう)と相手(欲しい人材)が望むものを整理します。この2つをつなぐアプローチを考え、「自社に入社すると、あなたの希望が叶えられます」と、相手を口説いていきます。

自分のためだけではなく、あくまであなたのためというのが前提です。口説く際の最もダメな行動は、どうしても採用したくて熱がこもり過ぎて、長々と話をしてしまうことです。相手を口説く際も、自分が多く話すのではなく、相手に多く話してもらうことが大切です。

自分が熱心に語りかけるより、相手中心の会話を展開するほうが、最終的に入社を承諾してもらえる可能性が高まります。じっくり相手の話を聞き、そして最後に自分の想いを端的に伝える。これがポイントです。

熱くなるとつい話が長くなってしまうという方は、Twitterをお薦めします。Twitterは140文字以内で文章を完結させないといけませんので、端的に話す良いトレーニングになりますよ。

このページのトップへ

第63回  ガール

アラサー女性を主人公にした短編小説。映画化もされ、ご覧になった方も多いかもしれませんが、働く女性社員の気持ちを知るうえでとても参考になる一冊ですのでご紹介します。

仕事は充実し、お洒落や女子会も楽しみ、一見すべてにおいて順調な人生を歩んでいると思いきや、ふとしたときに落ち込んでしまうという複雑で波の激しい女性の気持ちを見事に描いています。

仕事ができて、会社でそれなりの評価を得ている女性は、仕事への充実感から結婚が遅れる傾向にあるそうです。そして30歳を超えたあたりから、周りから「結婚しないの?」「何やってんの?」などと言われだし、負け犬のように扱われ、それらに対する苛立ちと同時に不安を抱え、それでも毎日を必死に生きている姿がとてもリアルで、女性はもちろん男性でも主人公に感情移入してしまいます。

また、男性目線では決して見えてこない細かい描写も秀逸です。 たとえば、男性上司が部下に対して怒ると“立派な指導”となるけど、女性上司が怒ればヒステリックと言われる不公平感や仕事ができる女性をライバル視する男性社員の嫌がらせ、女性社員同士の腹の探り合い、30歳を超えてまだ若作りすることの恥じらいなど女性の心の内が理解でき、男性の方が読むと、普段強気な女性社員にも、翌日から優しい目線で接することができると思います。

今後女性の活躍を期待する企業さんにはお薦めです!

このページのトップへ

第64回  クリエイティブ人事

キャリア論に詳しい神戸大学大学院教授の金井壽宏さんと、ユニークな人事制度を数々と生み出しているサイバーエージェントの人事部長曽山哲人さんの共著です。

サイバーエージェントの藤田社長は、「優秀な人材を集めてしっかり教育すれば、どんな事業であってもそれ自体が競争力になる。仮にサイバーエージェントがうどん屋をやっても成功できる」と言うほど、採用や教育など人材に関することには大変力を入れています。

曽山さんは人事として現場でそれを具現化されている方です。サイバーエージェントの人事制度は、アイデアも凄いのですが、それを社員に浸透させ、うまく活用できる点がとくに優れています。

その方法も詳しく書かれており、制度導入時の「しらけのイメトレ」や、矛盾する経営陣と現場双方の意見を叶えようとする「AND思考」などは、目から鱗です。「新しい制度を作りたいけど上手く活用されるかな」「従業員満足は上がっても、経営層は反対するだろうな」などと躊躇していたり、制度の定着に悩んでいる人事の方には、ピッタリの一冊です。

当書では、制度の紹介だけでなく、制度を導入するに至った背景や、運用方法(経営者や社員の不満にどう回答するかなど)も書かれていて、知的好奇心をくすぐるだけでなく、実際に現場で使える内容が盛りだくさんの充実した一冊です。

このページのトップへ

第65回 社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話

「ホリエモン」こと堀江貴文氏が率いたライブドアは、今や誰もが知る急成長企業LINEに吸収されました。しかし、元ライブドア社員の多くは「ホリエモンの意志」を継承し活躍されています。

今のLINEの躍進も、元ライブドアのエンジニアが支えている現状です。IT企業は、優秀なエンジニアを揃えること自体が競争優位性になるため、日々エンジニアの熾烈な獲得競争にさらされています。

そんな中、ライブドアには次々と優秀なエンジニアが集まってきました。それは堀江氏自身がプログラマー出身であり、優秀なエンジニアは自ら口説き落とし、採用していたからです。そして、堀江氏に口説かれた優秀なエンジニアが更にエンジニアを連れてくるという好循環になり、技術力の高いライブドアというブランドが業界に認知されてきました。

ライブドア事件の後、同業のサイバーエージェントがエンジニアを引き抜こうと考えましたが、彼らは一向に首を縦に振らず「それでもライブドアで頑張る」という答えで引き抜き作戦は失敗に終わったそうです。

ライブドア事件後は、対外的なイメージが悪化したため、採用活動は困難を極めたようですが、それでも堀江氏の採用スタイルのように、エンジニアを必死に口説き、集めていったそうです。読み物としても面白いですし、採用の大切さも教えてくれる一冊です。