人事コラム

第111回 デキる採用担当者が、こぞって抽象的思考力を磨く理由。

スタートアップ・ワールドカップ2019が開催され、物流最適化システムを開発したベトナムの企業が100万ドルを獲得しました。スタートアップ・ワールドカップは、優勝投資賞金100万ドルをかけて競い合う世界最大級のビジネスプランコンテストで、世界40の国・地域から選ばれたトップの起業家が米国シリコンバレーで世界一の座に挑むカンファレンスです。たった4分間のプレゼンで1億円を獲得するには、枝葉を切り捨て本質だけを抽出しなければならないため、高度な抽象的思考力が求められます。

この抽象的思考力は、採用担当者が最も身につけなければならない能力だと考えます。たとえば、合同就職説明会では、説明時間を自由に設定できることもあれば、30分や25分、20分、12分など説明時間が決まっていることもあります。

また、合同説明会の前や間に、1分や2分でPRする場を設けられることもあります。学生からの質問で「御社らしさを一言で表すと?」などの質問が来ることもあります。そんなときも、抽象的思考力が高ければ、その都度慌てずに、12分バージョン、2分バージョンと瞬時に頭の中で組み立てることができます。抽象的思考力が低い人は、スグに事例や正解を求めます。「たとえばこんな風にやってみたら?」というアドバイスも、「たとえば」を勝手に抜かして、そのまま実践します。せっかく他社の成功事例を学んでも、その背景や本質を知ろうとせず、具体的な行動だけをそのまま真似をして、上手くいかないというケースがよく起こっています。

抽象的思考力が高い人は、その事例を抽象化して本質を見極めます。そしてその本質を活かして自社にどう転用できるかを考えるので、深みが違ってきます。

抽象的思考力を鍛えるためには、「答えがない状態」や「先が見えない状況」、「考える孤独」から逃げずに向き合うことです。抽象度の高い本を読むのもお勧めです。その入門書として、外山滋比古氏の「思考の整理学」や 渋沢栄一氏の「論語と算段」はお勧めです。

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第112回 理解してから、理解される。

エントリーシート完璧!会社説明会での態度も好印象! 面接前からワクワクが止まらない。面接でも期待を裏切らず、会った瞬間の弾ける笑顔、凛とした姿勢、ハキハキした元気な声。面接が始まって数分しか経っていないのに気持ちは既に「採用!」。
頭の中は「どうすれば口説き落とせるか」でいっぱいに。残りの面接時間を、自社の魅力をアピールする場として使う。面接後は想いを込めて手書きで長文の手紙を送る。次回の面接も「選ぶ場」ではなく 「選ばれる場」と認識し、自社の魅力を伝えることを中心に進行。エース社員を面接に呼び、面接終了後には座談会も設ける。学生の反応も変わらずニコニコ笑顔。そして満を持して内定を伝える。しかし返事は…「辞退します」。 これは、ある企業様から聞いた実話です。似たようなことを体験した企業様も多いのではないでしょうか。

この学生が辞退した理由は、「自分のことを分かってくれていないのに…」でした。企業様は学生に対し第一印象で「採用したい」と感じたため、それ以降は、内面的なことを深堀りせずに、口説くほうにばかり神経を集中させてしまいました。つまり、相手を理解しようとせずに、理解してもらおうとしたのです。
人間関係の原則は「理解してから、理解される」です。相手は何を大切にしていて、どのような場面でモチベーションが上がるのか、下がるのか、将来どうありたいのかなど、まず先に理解に徹することが大切です。「この人は私のことを分かってくれている」と感じてもらえれば信頼が寄せられ、より会社のことを理解しようと努めます。相手のことが理解できていると、アピールポイントも相手に適した内容に絞れるため精度も高まります。第一印象だけで判断してしまうことも防げます。

いくら第一印象がよくてもそれだけで判断せず、相手を理解することに努めることで、相手の化けの皮が剥がれていくこともあります。「理解してから、理解される」。採用したいと思う人材こそ、この原則を大切にしてください。

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第113回 「この指、止まれ」で仲間を増やす。

「大企業に入るより、将来の大企業を一緒に創ろう」
2000年〜2007年くらいに、ITベンチャーなどが採用活動で使っていた常套句です。ソフトバンクや楽天、サイバーエージェントなどが躍進し、優秀な人材が大企業よりベンチャー企業を選んでいた時代でした。しかしライブドアショックでITベンチャーブームが落ち着き、リーマンショックで景気が後退後は、大企業信仰に後戻りしました。

そしてまた時代が変わりつつあります。今回の変化は、 “大手 VS 中小・ベンチャー”といった単純な構図ではなく、「与えられるより、自分たちで創るほうが楽しい」という価値観です。オンラインサロンの会員数ランキング上位のキングコング西野さん、ホリエモン、幻冬舎の箕輪さんのサロンでは、「お金を払って参加しているメンバーが働かされる」のがウリだそうです。箕輪さんは、 「お金をもらっている会社員より、お金を払っているオンラインサロンメンバーのほうがよく働くし、活躍する」とおっしゃっています。

SNSの普及により、一億総発信者時代となり、“与えられるより、創り手になりたい”という欲求を持った個人が増えてきたことが要因としてあげられます。このような時代に採用活動で成功するために最も大切なのは、リーダーの“この指止まれ”です。オンラインサロンのメンバーは、西野さんやホリエモン、箕輪さんの価値観やビジョンに共感して集まっているからこそ、“お金を払う側がよく働く”という現象が起こります。

大企業でも中小・ベンチャーでも、規模や待遇ではなく、価値観やビジョンを打ち出し、そこに共感し、ビジョン達成のためなら多少の苦労も不便も厭わない、というメンバーを集めることが、これからの採用活動のスタンダードになると考えます。そのためには、会社は何のために存在していて、どこに向かっているのかを明確にし、発信し続ける必要があります。そこに共感を得られたら、企業規模や福利厚生だけで勝負している大企業にも勝てるはずです。

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第114回 魚釣りの意義まで伝えないと、若者は自走しない。

「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」空腹の子に魚を与えるとその日は凌げるが、一生誰かに与えてもらわなければ生きていくことはできない。しかし魚の釣り方を教えれば生涯食べていける、という意味です。しかし現代社会では、これでは通用しません。正解が見えない今、仕事を教えてもらうのではなく、自ら仕事を生み出し、答えを創っていくことが求められます。

コーチングの世界でも 「答えを教えない」「相手に考えさせる」が基本姿勢です。新入社員にも「何したらいいですか?」 「どうしたらいいですか?」はNGワードで、「私はこう考えましたが、いかがでしょう?」と一旦自分で考えてから質問することの大切さを教えていると思います。スグに答えを教えていては、仕事は教えてもらって当たり前、与えられて当たり前となり、依存体質が染み付き、仕事で一番大切な考え抜く力や仕事を創り出す力が身に付かないまま年齢だけを重ねてしまう結果になります。

上司や先輩がいなくても、自ら考え行動できる人材が育てば、会社の成長は加速します。しかし、それは分かっていても、なかなか思ったように自律自走型人材が育たないという悩みをお持ちではありませんか。その理由は、今の若者が空腹ではない、つまり飢えていないからです。現在、食べるために働いている若者はほとんどいないはずです。幼い頃からいろんなものを当たり前のように与えられ、何不自由なく暮らしてきて、社会人になった瞬間、急にそんなことを求められても若者も困ります。自ら仕事を創り出す意味や答えを創ることの大切さを理解できないのです。

そんな若者の心を動かすには、魚釣りの意義や楽しさ、魚を釣った後の景色を先に伝え、自ら「やりたい!」とワクワクしてもらうことが大切です。一つひとつの仕事の意義を伝え、ワクワク感を持たせれば、勝手に自走し始めます。ほっておいても自ら効果的な魚の釣り方を考えるように、まずは釣りの意義を伝える。ぜひ今日からやってみてください。

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第115回 アイドルタイムが無くなった採用活動。

はりまっちでは、7月から2021卒対象の就活トレーニングジムを開催しており、毎回昨年の3倍以上の学生が参加しています。「今年は意識が高い学生が多いな」と感心していましたが、話を聞いてみると、昨年までとは大きく事情が違うようです。昨年までなら、この時期にトレーニングジムに参加する学生は、3月1日の就活解禁に向けて、早めに準備しておくことが目的でした。しかし今年は夏のインターンに参加した企業の選考対策として参加しています。

昨年までの企業の対応は、夏のインターンに参加した学生の志望度を3月1日までにいかに高めさせるか、維持させるかが課題で、「インターン参加者だけの特別座談会」といった接触機会を多く用意していました。しかし今年は、 「インターン参加者だけの特別選考」に名前を変え、間髪を入れずに選考をしています。学生はその対応に追われている状況で、新たに企業を探す余裕はなさそうです。「その企業から内定出たらどうすんの?」と聞くと、8割の学生が「就活は辞めます」と答えています。

時系列で整理すると、3年生の5〜7月にかけてインターン合説に参加し、8〜9月に5社ほどのインターンを受け、10〜12月にインターンに参加した企業の選考を受け、内定が出れば就活を終える、といったスケジュールです。感覚値ですが、このスケジュールで動いている学生は全体の4割程度いるんではないかと思います。そして2割の学生は11〜12月開催の冬のインターン合説に参加し、12〜2月の冬のインターンに5社ほど参加し、3月1日からその企業の選考を受け、残りの4割が3月1日から就活をスタートするという流れになりそうです。

これらの動きを鑑みると、企業も夏のインターンの開催は大前提で、3年生の6月、11月、3月と、採用活動を3回に分けて行う必要が出てきました。採用活動にアイドルタイムという言葉はもうありません。あ、そうこう言っている間に、そろそろ2022卒の夏のインターン合説の参加枠を押さえる時期がやってきますね。