第34回 主体的な人材を育てたいなら思い切った権限委譲(移譲)を。

元プロ野球選手の桑田真澄さんが2月2日(土)教職員に対し体罰について講演を行いました。
「(体罰は)絶対服従、仕返しされない関係の中で行われる一番卑きょうな行為」、「体罰なしでも、自分で考えて行動できる選手を、主体的に考えられる選手を育てていくための方法を勉強しないといけない」などと述べていました。素晴らしいお話で、教員だけでなく経営者にもぜひ聞いてほしい話ですね。

サッカーでも海外と日本のレベルの差は、自分で考えて行動できる力の差だと専門家は言います。 「そのプレーの意図は?」と訊かれたとき、監督の顔色を伺いながら答えを探ろうとする日本人。一方、世界の強国では子どもでさえ自分の考えを明確に説明し、その場その場で状況を判断しプレーしています。監督の顔色を伺わず、自分で考えそれを堂々と他人に意見する能力が日本の選手と海外の選手とでは歴然の差があり、それがそのままサッカーの実力の差に繋がっていると言われています。

以前、「今月の1冊」でご紹介した未来工業の山田社長は、優秀な部下を育てたいなら、部下に命令するな。命令すればする程、部下は「自分の判断で下手に動くと上司に叱られる」と感じ指示を待ってしまう。命令する上司程、「部下がなかなか育たない」と嘆いている。勘違いもはなはだしい、と言っています。
ワンマンで威圧的な経営者や上司の下で、主体的に考え動く従業員が育つ訳がありません。そういう企業に限って、求める人物像が、「指示待ちではなく、自ら主体的に動ける人」というから呆れてしまいます。そういう企業の求める人物像は、「自ら余計なことを考えず、言われたことを黙ってできる人」です。

このようなミスマッチが原因で転職を考えられている方が本当にたくさんいらっしゃいます。
主体的な従業員を育てたいなら、恐怖によるマネジメントは今スグに卒業して、従業員に大幅な権限を委譲(移譲)することです。一流ホテルのリッツカールトンでは、従業員に一日16万円の決裁権が与えられており、その範囲内なら、従業員は、お客様との対応でいちいち上司の判断を仰ぐことなく、その場の自分の判断で迅速にサービスを提供することができます。この権限委譲(移譲)が、世界一流と言われる所以なのです。