脳科学者の茂木健一郎さんが、「新卒一括採用では、非典型的で才能のある人材は発掘できない。そのような人材は、規格外との烙印を押されてしまい、日本ではスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツは生まれない」とTV番組で言っていました。それに対し、司会の東野幸治さんは、「企業は平均的な人を雇うほうが扱いやすくていいんじゃないですか」と投げかけましたが、「今はそんなんじゃダメなんですよ!東大を出た人を100人雇ってもイノベーションなんて起きない!1人の天才を雇った方が良い!」と茂木さんは語気を荒らげました。
私はスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツのような人材は、米国が新卒一括採用だとしても、それに関係なく地位を築いたと思います。非典型的な人は、制度や仕組みに囚われない生き方をするはずです。また、アップルやマイクロソフトも非典型的な天才ばかりの集団ではないはずです。ジョブズやゲイツの指示に忠実に従う平均的な人材がいたからこそ、今のアップルやマイクロソフトがあるはずです。天才だけだったら、組織として成立しなかったでしょう。
同じ番組の違う回では、ヒロミさんが、「昔の若手芸人で、(ダウンタウンの)松っちゃんの真似をして、命を落とした奴がいっぱいいた」と言っていました。漫才日本一を決める「M1グランプリ」の創設者である島田紳助さんは、「(ダウンタウンの)松本のせいで勘違いした若手芸人が増えた。奴らに勘違いに気付かせ、芸人の道を諦めさせるためにM-1を企画した」と言っていました。
サイバーエージェントの藤田社長は、起業がテーマの本の中で、「(元ライブドア社長)堀江さんもいいけど、彼のように際立った人ではなく、普通の人に起業して欲しい」と言っていました。また、25歳で最年少上場を果たした村上太一さんに対し「こんなまっとうに育った起業家が増えれば起業家のイメージも変わる」と普通であることを肯定的に述べています。稀代の天才が現れると、「自分もあの人(松本さんや堀江さん)のように、特別な存在だ」と勘違する人が出てきます。普通の人が、勘違いして、常識の無い行動を繰り返しては、企業が嫌うのは当然です。
イノベーションは、非典型的な人材だけでは生まれず、典型的な人材が支えているということを忘れず、無理に天才を演じなくても普通であることに誇りを持ってほしいですね。取り留めのない話になりましたが、新卒一括採用がイノベーションを阻害しているという理論は飛躍し過ぎているのでは?という個人的な感想でした。