第86回 最終面接までのハードルは低く、低く。

今期、企業様から一番お伺いする悩みが“履歴書(ES)が届かない”です。個別説明会の誘導までは比較的順調でも、その後に「選考を受けられる方は、履歴書を郵送してください」と伝えた途端、そこでフェードアウトしてしまう学生が続出するそうです。

学生に聞いてみると、就活短期化により会社説明会や選考の時期が重なり、履歴書を作成する時間が限られ、志望順位の高い企業にしか履歴書を出せない現状があるようです。「それくらいの志望度なら別に来なくてもいい」と思われるかもしれませんが、短期間で、一つの誤字も許されないプレッシャーの中で、大量の履歴書を手書きで書くことは、なかなか大変な労力です。

また選考が進むにつれて企業理解も深まっていき、志望度も上がっていくことも多いのです。ですから履歴書郵送が理由で、せっかく出会った学生とお別れしてしまうのは非常にもったいないことです。最終面接まではハードルは低く設定し、動機形成を行いながら選考を進め、志望度の確認は最終面接時にしっかり行うのが理想です。

具体的には、個別の説明会終了後のアンケートに、簡単な自己紹介の項目を入れておきます。自己PRや学生時代頑張ったことなど、あらかじめ学生が回答を考えている質問にとどめておきます。志望動機はまだ初期段階のため聞かないようにしてください。その書類を基に次回以降の面接をします。

そして、最終面接まできてやっと手書きの履歴書を提出させます。この段階までくると学生の志望度も高まってきていて、全力かつ前向きに書いてくると思います。ここまできて提出がなかったときには、「なら別に来なくてもいい」と見放してください。

「学生を甘やかせ過ぎではないか」とのご批判もあるかと思います。ただ、手書きの履歴書を郵送できずに姿を消した学生の中に、貴社が求める人材が埋もれている可能性は十分にあります。出会ったばかりでまだ志望度が高まっていないだけなのかもしれません。そういった学生を口説き、入社までもっていくことが採用担当者の力量でもあります。