9月15日土曜日の日経新聞夕刊に“技術者に転職志向”という記事が一面に出ていました。私も普段エンジニアの方と面談などで接していると、一つの会社に依存するのではなく、「自分の技術がもっと活かせる」「最先端の物づくりに挑戦できる」「お給料が高い」「エンジニアの職場環境が良い」などといった会社があれば抵抗なく転職を決められます。会社に頼らないキャリアにこだわりを持っています。
自己啓発本やキャリア形成本などでも、「会社に人生を預けるな」「常に自分の市場価値を考えろ」「どこに出ても通用するキャリアを身に付けろ」などの言葉が踊ります。確かに今のシャープやNECを見ていると、会社にしがみつくのは非常にリスクが高いと感じてしまいます。そのため、その会社でしか通用しない技術を嫌がる傾向にもあります。いくらその会社での評価が高くても、それが一歩会社から出たら通用しないキャリアを嫌がります。
しかし、会社にとっては、そのエンジニアしかできない仕事というのはリスクが高いため、できるだけ技術継承、標準化、マニュアル化をするようにします。そうなってくると、優秀なエンジニアは、「自分にしかない技術」という誇りがなくなり、「誰でもできる作業」に嫌気がさし辞めていくことも多いようです。良い人材が斜陽産業から成長産業に移ることは、経済活性化や経済全体の新陳代謝にも効果があると思います。個人が会社に頼らず、自身の成長やスキルが一番のリスク回避という考えも素晴らしいと思います。
しかし、会社からすれば、せっかく優秀なエンジニアを採用し育成したのに、次から次へと辞められるのは、頭を悩ます問題です。これらはエンジニアに限ったことではありません。たとえば営業職でも、「このお客さんは会社ではなく、私個人を信頼して取引してくれている」という誇りがモチベーションであったり、顧客の引き継ぎ時に「●●さんが担当外れるんやったら、もう取引やめるわ」と顧客が言えば、その営業マンはうれしいですが、会社としては痛手です。
このように自分のキャリアを中心に考える個人と、マニュアル化、標準化したがる企業、この両者のギャップを埋めない限り優秀な人材の離職は止められないかもしれません。