第62回 1名の応募で1名の採用が究極の採用。

告白された異性の中から選ぶのではなく、自分が好きになった異性を口説く。自分にまったく興味を持っていなくても口説きまくって振り向かせる。これが採用の本質です。合説でも説明会でも、少ないより大勢のほうが気持ちいいですし、採用活動を頑張っている感は出ます。

しかし、自社が採用したくもない人材を大勢集めてもまったく意味がありません。ある外資系の企業では「どうして、10人しか採用しないのに、1万人近くの応募者を集めるのか?あなたの仕事は、私たちが欲しいと思う人材を10人、目の前に連れてくることだ」と人事担当者に教育しているそうです。

確かに日本での採用活動は、多くの母集団を集め、その中から自社に合う人材を絞り込んでいく手法が主流であり、効率的です。「採用したくもない人材を何名も集めるほうが非効率じゃないか」という反論が聞こえてきそうですが、やはり多くの母集団から絞り込むほうが効率的です。理由は、欲しい人材がどこにいるのか調べて、自ら会いに行き、興味の無い人材を粘り強く口説く、という一連の活動は、大変な労力を要するからです。それが何名もとなると、専任の採用担当者でも大変です。総務などと兼務されている方ならそこまではさすがにできません。

そこで、まず現実的にできることを2つご紹介します。1つめは、採用したい人材像を明確にし、ターゲットのみが応募したくなる募集広告を作成し、応募の段階で母集団を絞り込むことです。求める人材のみが感じる会社の魅力や入社のメリットを広告で伝えます。「たくさんの方のご応募お待ちしています」ではなく、「こんなタイプの方なら当社はピッタリです。それ以外の方は、地獄です」くらいのメッセージを出すことです。

そうすることで自社が求める人材のみが応募してくれる可能性が高まります。2つめは、応募してきた人材の中で、自社が第二志望以下の欲しい人材を口説き、内定承諾させることです。ただ自社の魅力を伝えるだけでなく、応募者の想いやビジョンなどを詳しく理解し、それがなぜA社ではなく自社なら実現できるのかを丁寧に話すことが大切です。

また口説く人も大切です。学生にとって魅力的に思わない社員がいくら熱心に口説いても効果はありません。魅力的な社員に口説かせることで、採用の可能性が広がります。