第44回 事業の競争優位性が無ければ、ビジョンと人の魅力を訴求する。

先月の中旬から2014年卒業者を対象に新卒採用をスタートしたある会社が、既に2名の採用を決定しようとしています。しかも、数合わせのための妥協した採用ではなく、しっかりと求めるターゲット通りの人材を採用できそうなのです。同社は従業員数20名程度の小さな会社です。安定志向の強い近年の学生にとっては不安要素です。しかし、それでもこの短期間に求める学生を採用できそうなのは、事業の差別化、競争優位性がしっかりとれているからです。

たとえば、同社の事業のひとつにソフトウェア開発事業があります。ソフトウェアの開発企業は星の数ほどあります。しかし同社はその中でも、他社がなかなか手を出せない非常にニッチな分野に切り込み、その分野では業界No.1のシェアを誇っています。「何でも開発します!」ではなく、「この分野ではNo.1!」を追求しているのです。

また、そのソフトウェア開発の技術を応用し、マラソン大会などでタイムを計測するシステムを開発し、マラソン大会のイベントごとプロデュースする事業も展開しています。こちらの事業でも、スポーツ大会をプロデュースしている企業は星の数ほどあります。しかし、同社はこのタイム計測という付加価値をつけて差別化を図り競争優位性を保っています。事業で競争優位性がしっかりとれていれば、採用広告でも学生に訴求しやすく、学生も魅力を感じてもらいやすく志望意欲が高まります。事業の競争優位性が採用の競争優位性にもつながるのです。

しかし近年、同社のように事業で差別化を図るのは難しくなってきています。「10分1000円の散髪屋」が出来た当初、ブルーオーシャン市場に切り込んだと話題になりましたが、結局スグにレッドオーシャン化されてしまいました。こんな差別化の難しい時代に求める学生を惹きつけ採用を成功させるためには、まずは会社のビジョンを語ること。学生個人のビジョンと会社のビジョンが一致すれば、入社の確率は高くなります。企業と個人のビジョンの一致は、企業規模を超える動機付けになります。

また、人で差別化を図ることもできます。事業は他社の真似でも人が優秀であれば市場を逆転することもできます。人で差別化を図っている場合は、人の魅力を前面に打ち出すことで、学生を惹きつけることもできます。