過酷な長時間労働を従業員に強い、自殺者まで出し、「ブラック企業」の代名詞となった和民。それまでは、創業者の渡邉氏はカリスマ経営者として、メディアに度々登場するなど、ビジネスパーソンの憧れの存在でした。
「24時間365日死ぬまで働け」「営業12時間の内、メシを食える店長は2流」などといった過激な発言が話題になりましたが、それでも当時は「さすが渡邉さん」といった感じで肯定的に受け止められていました。それが自殺者が出てから状況は一変し、「ブラック企業」という言葉の流行も手伝って総叩きをくらうことになります。しかし、彼の根本には「地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集めるグループになろう」という理念があり、これは本気で想っていたと思います。
しかしこの想いが強すぎて自分を従業員に勝手に投影し、自分と同じ働き方を強要してしまいました。当書では、渡邉氏の強すぎるリーダーシップと、従業員の人の良さに甘えて、労務管理や人事制度の構築など、本来やるべきことを、会社成長の陰に隠れて、ないがしろにしたことが一番の失敗だと指摘しています。
急成長中や事業拡大中の企業様、離職率の高さに悩まれている企業様は、この和民の失敗から学ぶことも多いと思います。創業者やトップの崇高な理念を従業員とどのように共有し、会社を成長させていくのか、考えさせられる一冊です。